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推奨 吸血鬼ドラキュラ
ブラム・ストーカー:著/平井呈一:訳/創元推理文庫

 トランシルヴァニアの山中、星明りを封じた暗雲をいだいて黒々と聳(そび)える荒れ果てた城。その城の主ドラキュラ伯爵こそは、昼は眠り夜は目覚め、狼やコウモリに姿を変じ、人々の生き血を求めて夜を徘徊する吸血鬼であった。ヨーロッパの辺境から帝都ロンドンへ、不死者と人間の果てにしのない闘いが始まろうとしている……時代を超えて読み継がれる吸血鬼小説、最高最大の傑作!
 何はともあれ基本の一冊。訳が70年頃なので言葉や訳に気になる点も無いではないですが、名訳の一つ。ヴァンパイアに興味を持ったら買っておこう。


推奨 ドラキュラ 完訳詳注版
ブラム・ストーカー:著/新妻昭彦・丹治愛:訳/水声社

 年々再評価の声が高まり、今や英文学の古典としての地位を確立した吸血鬼小説の傑作が、本邦初の完訳にて蘇る! さらに、『ドラキュラ』の冒頭部分として構想された短編『ドラキュラの客』、最新の研究成果に基づいた詳細な注釈・解説、貴重な資料等もあわせて掲載し、その恐怖に多面的に迫る!
 「超訳」の平井訳より正確に翻訳されているので、記述の正確さと周辺情報を求めるのなら。ハードカバーで4000円と値段も張るので、マニア向け。


シャーロック・ホームズ対ドラキュラ
  あるいは血まみれ伯爵の冒険

医学博士ジョン・H・ワトスン:著 /ローレン・D・エスルマン:編 /目暮雅通:訳/河出文庫

 シャーロック・ホームズの輝かしい冒険のなかに、まだ公開されていない大事件があった!! それはあのドラキュラ伯爵にまつわる恐ろしい怪事件であった。なんとホームズは、ドラキュラ伯爵とすさまじい死闘を演じたことがあったのだ……。ハードボイルド作家として知られるローレン・D・エスルマンが、ホームズ・パロディーに挑戦した若き日の快作、遂に登場!!
 「タイトルから創造されるものよりは出来が良い。」


推奨 ドラキュラ公 ヴラド・ツェペシュの肖像
篠田真由美:著/講談社文庫

 何十万もの人間を生きたまま串刺しにしたとされるワラキア公ヴラド。その残忍さゆえに小説「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなった男の真実の貌とは。強大なオスマン・トルコ帝国を相手に孤独な戦いを挑み、過酷な時代を疾風の如く駆け抜けたもうひとりの“織田信長”の実像を人気の女性作家が描く異色長編。
 ドラキュラからヴラドについて調べたいのなら、まずお勧めしたい一冊。普通の小説として読んでも十分面白いので手始めに。


髑髏検校
横溝正史:著/講談社大衆文学館

 絶海の孤島から不死身の怪人・髑髏検校が江戸に潜入、夜ごと、生き血を求めてさまよう。侍女ふたりもまた吸血鬼だ。立ち向かうのは剣の名手、碩学の鳥居蘭渓と息子の縫之助。しかし、父子の奮闘を嘲笑うように、江戸の闇を切り裂く恐怖の悲鳴は跡を絶たない! 異色の日本版ドラキュラ小説に、剣士、妖術使いが名笛を争う伝奇ロマン『神変稲妻車』を加えた、巨匠の妖美の筆鮮やかな怪奇傑作選。
 「髑髏検校」は全体の1/3、150Pほどの独立編。他に角川文庫富士見書房からも。
 「神変稲妻車」は講談風な時代小説。


ドラキュラ紀元
キム・ニューマン:著/梶本靖子:訳/創元推理文庫

 ヴァン・ヘルシングが斃れ、ドラキュラはついに英国全土を征服した。だがその治世下、吸血鬼の娼婦ばかり惨殺される事件が発生。諜報員ボウルガードは、闇の内閣の命を受け<切り裂きジャック>追跡に乗り出す。一方、ドラキュラとは血統を異にする吸血鬼の美少女、ジュヌヴィエーヴもまた事件を追いはじめるが……いまひとつの世紀末。虚実ないまぜにして贈る、あの名作の続編!
 あらゆるヴァンパイアと関係者や小説などの人物が登場する異色作。吸血鬼やホームズ、ジェイムズ・ボンドなども登場。


ドラキュラ戦記
 ドラキュラ紀元1918年、ドイツ戦闘航空団の蝙蝠の翼が夜空を切り裂く。イギリスを追放された『吸血鬼の王』が、ついに報復をはじめたのだ。敵の拠点たる古城を探索する英国諜報部員は何を見たか? 祖国を捨てた詩人エドガー・ポオが受けた独皇帝の密名とは? 虚実ないまぜて物語られる、もうひとつの第一次大戦。恐怖と鮮血の年代記がここに再び開幕する。

ドラキュラ崩御
 1959年、ドラキュラ成婚に沸く栄華の都ローマ。密命を帯びた英国情報部ボンド中佐の前に、吸血鬼のみを暗殺する〈深紅の処刑人〉が!




推奨 ヴァンパイア・クロニクルズ(V.C.)
夜明けのヴァンパイア
アン・ライス:著/田村隆一:訳/ハヤカワ文庫

 「私がヴァンパイアとなったのは二十五歳の時、1791年のことだ」彼はそう語りはじめた。彼の前にはテープレコーダーが置かれ、一人の若者が彼の言葉に聞き入っている。彼は語る。アメリカからヨーロッパへの歴史の闇を歩き続けた激動の二百年間のことを。彼をヴァンパイアとした“主人”吸血鬼レスタトのこと、聖少女クロウディアとの生活、訪れた破局――伝説の存在、吸血鬼の驚くべきインタビュー。世界的ベストセラー。
 映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(監督ニール・ジョーダン 出演:トム・クルーズ、ブラッド・ピット)の原作。


ヴァンパイア・レスタト 上
アン・ライス:著/柿沼瑛子:訳/扶桑社ミステリー

 金髪美形の吸血鬼レスタト。55年ぶりに現代に蘇ったこの闇の申し子は、莫大な財と常人をはるかに超えるヴァンパイアの能力により、たちまちロック界のスーパースターなった。彼はさらに種族の掟を破って自伝を書こうと決意する。それは1780年代に二十代の若者として生きていたとき、パリで老ヴァンパイアにより闇の世界の住人にされて以来の、血と官能に彩られた歴史だった。人間たちに秘密を明かせば、決してただではすむまいが、それはむしろ望むところ……。巨匠アン・ライスが華麗に描く吸血鬼小説の傑作!
 前作から出版社・訳者変更。登場人物も主役脇役が逆転します。
 映画『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』(監督:マイケル・ライマー 出演:スチュアート・タウンゼント、アリーヤ)の原作。映画版では過去の話がすべて削られてしまっているので抄訳・粗筋の印象。レスタト神話の深みを知るためには一読を。


呪われし者の女王 上
 レスタトのロックスターとしての活動が、すべてのヴァンパイアの<母>である女王アカシャを長の眠りから目覚めさせた。護り人だったマリウスは、世界銃に危険のメッセージを放つが、このときから世界各地のヴァンパイアが次々と滅ぼされていく。そしてヴァンパイアや人間の超能力者たちのなかに、赤毛の双子が出てくる不気味な悪夢に悩まされる者が数多く見られるようになった。これは女王の復活と関係のあることなのか? 『ヴァンパイア・レスタト』に続き、アン・ライスが放つ<ヴァンパイア・クロニクルズ>最新作!
 映画『クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア』の原作。


肉体泥棒の罠 上
  暗黒の神と言っていいほどの力を持つヴァンパイア・レスタト。だがいつしか彼はその力にも、自らの在りようそのものにも疑問を抱くようになっていた。人間だった頃が悲しいまでに懐かしい……。そんな思いにとらわれていたある日、ラグラン・ジェームズという男から、何日か肉体を交換しようと持ちかけられる。自ら肉体泥棒と名乗るその男には、考えられないような秘儀を行う力があるというのだ。再び人間に戻れるという魅力に抵抗できなくなったレスタトは、仲間の反対を無視してジェームズの提案を受け入れるが――。

悪魔メムノック 上
 麻薬密売人ロジャーに魅せられ、ヴァンパイア・レスタトは彼を獲物に選んだ。めくるめく血の饗宴の後、ロジャーの死体を始末したレスタトは、とあるバーに入る。だがそこで待ちうけていたのは、殺してきたばかりのロジャーの幽霊だった。彼はテレビ伝道師をしている娘ドーラを守ってくれるようレスタトに頼み、消えていった。一方、最近自分の後をつけている男のことを気にかけていたレスタトの前に、当のストーカーが姿をあらわす。メムノックと名乗る悪魔だった。ロジャーの住まいにあった堕天使の彫像そっくりの……。

パンドラ、真紅の夢
 アウグストゥス帝治世下のローマに、パンドラは元老院議員の娘として生まれたが、政争により一族は崩壊、彼女は独りギリシアのアンティオキアに逃れる。エジプトの女神イシスを崇拝するようになっていたパンドラは、そのころから自分が血を飲む不思議な夢に悩まされていた。そんな折、彼女の前に現れたのは、かつて好意を寄せていた男性マリウスだった。いかなる運命がパンドラを<ヴァンパイア>に変えたのか……。シリーズに光芒を放つ美女パンドラが語る、流転と遍歴の物語!
 V.C.外伝。これまで「ギリシアの高級娼婦」としてわずかにしか語られなかったマリウスの旧知パンドラの伝記。外伝ではありますが、これ一冊で十分独立長編として読めます。


美青年アルマンの遍歴 上
 十五世紀のキエフの地で天才的なイコン描きと称えられた、美しくも信仰篤い若者がいた。しかし若者は、あるひ草原でタタール人に略奪され、奴隷として売られる。行き着いたヴェネツィアで彼の主人となったのは、当時高名な画家だったマリウス。彼は若者をアマデオと呼んで愛した。このマリウスこそ、千五百年の歳を経た輝かしき強力なヴァンパイアだった。そしてアマデオ―のちのアルマンは、瀕死の重症を追ったことを契機に、マリウスにより闇の世界に生きる不滅の存在に変身させられる。
 V.C.外伝。何故か『インタビュー』ではオヤジ、『クイーン』ではチビポチャに描かれた絶世の美少年。『眠り姫』を引きずったような描写と男色傾向があるので、慣れない人は少々注意。


呪われた天使、ヴィットーリオ
 トスカナ地方の領主の息子で、天使を思わせる美少年ヴィットーリオ。幼いときからメディチ家の支配するフィレンツェでルネサンス文化を浴びて成長した彼は、父の城で騎士としての修練にも励んでいた。だがある日、城を残虐なヴァンパイア集団が襲った。彼らはヴィットーリオの一族を皆殺しにするが、なぜか美貌の女ヴァンパイアは彼の命を救った……。人間としての生を捨て、悪魔たちへの復讐を誓った少年が、闇の種族に身を投じた経緯を語る<ヴァンパイア・クロニクルズ>の異色作!
 V.C.外伝ですが、おなじみのメンバーは登場しない。面白いは面白いんですが、さらっと読めてしまって、残るものが無かったです。あるのはフラ・フィリッポ・リッピとフラ・アンジェリコへの賛辞。




推奨 ヴァンパイア奇譚 真紅の呪縛
トム・ホランド:著/松下祥子:訳/ハヤカワ文庫

 天才詩人バイロンの失われた回想録を探して、レベッカは深夜の礼拝堂に忍びこんだ――そこで彼女が目にしたのは、若く美しいまま現代に生きつづけているバイロンその人だった! トルコのパシャの女奴隷と激しい恋に落ち、吸血鬼たちの王として君臨していたパシャと対決することになっていたために、バイロンが辿ってきた数奇な運命とは? 『夜明けのヴァンパイア』以来の傑作と絶賛された英国の俊英による華麗なるホラー
 既に入手が難しくなっているのが残念ですが、らいとさんのお勧め品バイロン卿の伝奇物語。続刊の『渇きの女王』共々見つけたら読めッ。


ヴァンパイア奇譚 渇きの女王
 血液学を研究する医師エリオットは、吸血鬼伝説が囁かれるインド国境で、身の毛もよだつ体験をしたあと帰英した。ロンドンで診療所を開いたが、悪夢は故国までも追ってきた。親友の一人が血を抜かれてテムズ川に浮かび、もう一人が失踪したのだ。友の行方を追うエリオットは劇場支配人ブラム・ストーカーと知りあい、二人はヴィクトリア朝ロンドンを跳梁する吸血鬼の正体をさぐっていく。注目のヴァンパイア奇譚第二弾!
 ストーカーに加え、ヴィクトリア朝のもう一人の恐怖も登場。




石の夢 上 /
ティム・パワーズ:著/浅井修:訳/ハヤカワ文庫

 19世紀初頭のイングランド。結婚式を翌日に控え、友人たちと独身最後のパーティを楽しんでいた産科医クロフォードは、ふとしたはずみで、とある宿屋の中庭にあった石像の指に結婚指輪をはめてしまった。ところが、この石像の正体は眠りについていた吸血鬼だった――クロフォードの行為は吸血鬼との結婚の儀式になってしまったのだ! 目覚めた吸血鬼は、クロフォードを自分のものにしようと執拗に後を追いはじめた……!
 詩人バイロンやシェリイを絡めた幻想伝奇。バイロン等の行動も史実通りだということなので、その辺り知識があればもっと楽しめるんじゃないかと思いますが、適当な本があるのかな? …てゆーか、何を書いてもネタバレな感じがするので、とりあえず読め。『石の血脈』がこれのパクりなのかと思ったら、『夢』が89年、『血脈』が75年と逆だったようで。




フィーヴァードリーム 上/
ジョージ・R・R・マーティン:著/増田まもる:訳/創元推理文庫

 ジョシュア・ヨーク? 船長のアブナーは舵を握りしめた。事故で持ち船を失った自分に莫大な資金を出し、この壮麗な蒸気船フィーヴァードリーム号を建造させた男。ミシシッピ川での船旅がしたいと言う。そのくせ昼間は船室に閉じこもったきり、姿を見せるのは夜だけ。だいいち、あの眼は……アブナーはまだ知らない。ジョシュアが、仲間の吸血鬼を率いた血の支配者であることを!
 読んでいる間中、良い意味で読み飛ばしそうになり続けてしまうというのも、帯の煽りをそのまま受け入れられるのも珍しい。今まで読まなかったのが悔やまれる一作。バイロンの詩、吸血鬼の設定、当時の匂いを感じさせる精緻な描写、読後感の良さどれも良。




石の血脈
半村良:著/ハルキ文庫

 妻が失踪した! 新鋭建築家・隅田にとってそれはあまりに突然の出来事だった。まして知る由もなかった。彼の周囲で、不死を求める者たちが暗躍していることを、シュリーマンが発掘したクロノスの壺、古代の巨石信仰、犬神信仰、狼男伝説、吸血鬼伝説――世界各地に残るこれらの伝承には、ある恐るべき事実を解く鍵が潜んでいるというのだが……。歴史の闇を縦横無尽に駆けるSF伝奇ロマンの傑作。
 吸血鬼、巨石信仰、暗殺教団、ケルビム…その他諸々、これだけの素材を一つに織り上げた手腕は見事。世界中の伝説や仮説にしても違和感無く織り込まれています。それでいながら、現実の人間関係や思惑も軽視されている訳ではない。大元や諸説に問題があるのは否めませんが、それでも充分満足のいく作品なんじゃないかと思うデス。ちなみに性表現は多め。吸血鬼伝説の源への仮説として。




ミッドナイト・ブルー
ナンシー・A・コリンズ:著/幹遥子:訳/ハヤカワ文庫

 Tシャツの上に黒の革ジャン、懐には銀のナイフを忍ばせ、美しい顔には常にミラーのサングラスが……彼女の名はソーニャ・ブルー。彼女には、人の目には見えぬこの世界の真の姿を見ることができた。この世界に重なって存在する<真世界>――そこは、吸血鬼、人狼、オーグルが人の身体をまとって闊歩する驚くべき世界だった。そして彼女こそ、この<偽装者>たちを次々と倒してゆく、恐るべき力を秘めたハンターであった!
 説明だけを読むとゲーム程度の設定でしかないですが、設定は設定として現実世界と乖離せずに上手く調和しています。全体がアクションの娯楽小説ですが質は良。オーグルや人狼などファンタジー系の知識が少しあれば、イメージしやすいでしょう。


ゴースト・トラップ
 私立探偵パーマーは、謎の老人から奇妙な依頼を受けた。音信不通の孫娘を探し出し、手紙を渡してほしいという。だがその老人こそ古参吸血鬼パングロスであった。彼はソーニャにモーガンの情報を与えることで、その陰謀を妨害しようとしていたのだ。やがてソーニャとパーマーは、宿敵モーガンの隠れ家――巨大な幽霊屋敷ゴースト・トラップへと乗りこんでいったが……美貌の女吸血鬼の活躍を描く、待望のシリーズ第2弾!

フォーリング・エンジェル
 モーガン卿の魔手をのがれ、パーマーとともに南米に隠れ住んでいたレーテは、驚くべき美少女に変貌していた。金色の瞳をもった美しい熾天使。だれが見ても、こんどの誕生日で三歳になる幼女とは思えないだろう。そしてこの少女が、やがて人類の未来を変える驚くべき使命をおびていることも! そしてまた、美貌の女吸血鬼ソーニャにも、彼女自身が知らなかった驚くべき使命が……待望の<ミッドナイト・ブルー>三部作完結篇!

ブラック・ローズ
 巨大都市の片隅にひっそりとたたずむ街―デッドタウン。昼は浮浪者や麻薬常習者がたむろする汚れた町にすぎないが、その名前の由来は別にあった。夜になるとそこは、恐るべき吸血鬼の支配する文字どおり「死の街」と化すのだ。だがこの街に一人のよそ者がやってきたとき、すべてが変わった……吸血鬼にとっては最悪なものに。美貌の吸血鬼ハンターが、強大な闇の勢力に対し敢然と闘いを挑む傑作痛快冒険ホラー!
 TRPG『The World of Darkness』と前三作のソーニャ・ブルー世界を交錯させた外伝。ゲームのノベライズのような読みにくい印象はありますが、




夜の子供たち 上
ダン・シモンズ:著/布施由紀子:訳/角川文庫

 アメリカ防疫センター(CDC)の女医・ケイトは、ルーマニアで重度の免疫不全を持つ孤児を見つけた。最新医学によって、彼女はその遺伝子がエイズや癌の画期的治療の鍵だと気づく。だが、その子供はトランシルヴァニアの伝説、ドラキュラ一族にとっても特別な存在だったのだ…。チャウシェスク政権崩壊直後、混乱の東欧を舞台に、医学が闇の伝説に挑むゴシック・ホラー長編。
 医学部分は難しくて流し読みしかできませんが、エイズや孤児と言ったルーマニアの混沌としたリアルな状況描写やトレントの回想部分は良。参考にされている『ドラキュラ伝説 吸血鬼のふるさとをたずねて』と『ドラキュラ』のもう一つのエンディングを知っていれば、更に楽しめるのではないかと。著書『サマー・オブ・ナイト』や他の作品とも登場人物などが関連しているようなので、興味があればどうぞ。




女検死官ジェシカ・コラン
ロバート・ウォーカー:著/瓜生知寿子:訳/扶桑社ミステリー

 逆さ吊りにされ、大量の血液を抜き取られた若い女の死体。片腕は落ち、乳房や性器はめった切りにされていた……最近アメリカ中西部で連続して起きた残虐な殺人事件を追っているFBIの心理分析官オットーは、犯人のプロファイリング強化のため、検死官のジェシカに協力を求めた。ジェシカは目につくすさまじい損傷の陰に、犯人が隠そうとした小さな傷跡を発見する――処女の血を飲み、血の浴槽につかる人間吸血鬼の目的とその人物像は? FBIの女性検死官が、現在の異常な殺人事件に挑む衝撃のシリーズ第一弾!
 吸血殺人鬼ですが、オカルトやホラーではなく普通のミステリ。普通に面白いんですが、後半が少し走り過ぎた感があるので、もう一段厚くても良かったかな。ただ、妙に冷めた感じで読んでしまったので、こちらの主観のせいなのかも。その辺微妙。続編は人肉食殺人。




ライヴ・ガールズ
レイ・ガートン:著/風間賢二:訳/文春文庫

 ホラー史上最悪。露悪・凶悪・俗悪。悪名高いニューヨークの歓楽街、タイムズスクエア。そこにひっそりと建つ覗き部屋、≪ライヴ・ガールズ≫。妖しいネオンに誘われ、その店を訪れた男たちは皆、血に飢えた悪鬼と化す……。現代都市の下腹に蠢く吸血鬼を、強烈な悪趣味感覚で描きつくす伝説のカルト・ホラー。20世紀ホラーが遺した悪夢の傑作、驚愕の日本上陸。
 社会の下層に生きるヴァンパイアたちの血を得る方法や下等ヴァンパイアの存在についてなど設定は上手い。性的表現が多いので、ちょと男性向きかな。




闇の果ての光
ジョン・スキップ&クレイグ・スペクター:著/加藤洋子:訳/文春文庫

 昼も暗闇に閉ざされたニューヨークの地下鉄構内。そこで連続する惨殺事件――だが犯人の招待を知る者はわずかだ。そいつの名はルーディ、憎悪と鬱屈に満たされた若者。吸血鬼の牙が彼を血に飢えた悪鬼に変えた。街を鮮血色に塗りつぶすルーディを狩るべく、彼を知る者たちが立ち上がる。強烈な疾走感で圧倒する吸血鬼ホラー。
 ゾンビの如き吸血鬼によるスプラッタパンク。そもそもが低俗なので、B級ホラー、あるいは七人のおたくでも観る感覚で。
 フォント弄りと、突然白昼夢が混じったりする文体に、後半まで登場人物の逡巡が続くので、ひょっとしたらその辺りが読むのには苦痛かもしれない。個人的に、土臭いヴァンパイアを感じさせてくれるという点で割と評価。TRPGオタクとゴス娘、落書きアーティストがビールとマリファナをやりながら殺しあう中、一人の老人が異彩を放っていたのが印象的。
 ちなみに最後の解説がウザい。




ニューオリンズの白デブ吸血鬼
アンドルー・フォックス:著/大谷真弓:訳/アンドリュー・プレス

 ニューヴァンパイア・ヒーロー誕生!? ニューオリンズをこよなく愛するジュールズ・デュションは、ダイエットに悩む白人ヴァンパイア。仮の姿はタクシー・ドライバー。世界No.1の脂肪分とカロリーを誇るニューオリンズ市民の血液を飲み続けたせいで、超肥満体に成り果てた。そんな彼を街から追い出そうと闇からつけ狙うは、黒人新参ヴァンパイアのマリスX。肥満に屈するのが先か? 極悪ヴァンパイアに負けるのが先か? ジュールズの運命はいかに――。抱腹絶倒! 前代未聞のヴァンパイア・ストーリー。
 悪い方へ悪い方へ進んでいく愛すべき駄目主人公とアメコミな展開。これまで何人ものヴァンパイアを見てきましたが、この設定と質は初。個人的には割とオススメですが、この微妙感を楽しめるか否か…。耽美や暴力を求めるのなら薦めない。




ロスト・ソウルズ
ポピー・Z・ブライト:著/柿沼瑛子:訳/角川ホラー文庫

 母親の肉体を引き裂いて生まれてきた、ヴァンパイアの血を引く美しい少年。つきまとう孤独を埋めるために、彼は魂を揺さぶるパンク・バンド『ロスト・ソウルズ?』のメンバーが住むミッシング・マイルを目指す。そして、さすらいのうちに出会った、緑の瞳の酷薄な青年ジラーに血と官能を教えられ、心奪われてしまう。―享楽の夜々。その果てにもたらされた恐るべき真実とは…。精神と肉体の境界を越えた濃密な愛を描く耽美ホラー。
酒と麻薬と血と汗と精液で汚れたベッドの上で、本当に愛する相手と共に安らかに眠ること。そういえば女って殆ど関わってこなかったな…。




呪われた町 上 /
スティーヴン・キング:著/永井淳:訳/集英社文庫

 二十世紀のアメリカ。メイン州の田舎町に“永遠の不死”をいう宿命を背負った吸血鬼が蘇った。非業の死をとげた人々の霊がとりつくマーステン館が町に不吉な影をおとす。不可解な死者が増える……。吸血鬼の見えない恐怖に徐々に変質し、崩壊していく町を不気味なリアリティで描く最新恐怖小説。
 田舎町に現れる吸血鬼の恐怖の典型。20年以上前の作品なので大分使い古された感はありますが、昔に読んでいたら面白かっただろうと窺わせてくれます。私は今更でしたが、下手に劣化コピーに触れる前に、早目に読むことを推奨。ちなみに吸血鬼の由来に関する言及は少ないです。本体が古い存在であることは一度だけ触れられますが、あとの特徴は典型的。
 にしても、粗筋で吸血鬼に言及するのはどうかと思う…




屍鬼 1 /  /  / /
小野不由美:著/新潮文庫

 人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躙したかのように散乱していた──。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも……。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。
 『呪われた町』日本版。ボリュームはあるがそれを感じさせないほど引き込まれる。多くの魅力的な登場人物を全て描き切る手腕は見事。劣化コピーの多い中、原作以上の魅力を感じさせる作品。




奴らは渇いている 上 /
ロバート・R・マキャモン:著/田中一江:訳/扶桑社ミステリー

 最近、ハリウッドの墓地では、墓が掘りおこされ、棺桶が盗まれるという怪事件が発生していた。この知らせを聞いた警部パラタジンは慄然とする。彼が子供のころハンガリーで体験した吸血鬼騒ぎと同じだったからだ。アメリカの最先端を行くロサンジェルスに吸血鬼が? しかし謎のプリンス・コンラッド・ヴァルカン率いる一大勢力はすでにこの巨大都市を制圧しようとしていた――。 モダンホラーの最新鋭ロバート・マキャモンが恐怖小説永遠のテーマ<吸血鬼>に新風を吹き込んだ超大型冒険小説!
 田舎町からロサンジェルスにスケールアップ。普通に面白いんですが、風呂敷を広げすぎているせいか、個人的には少し物足りなさも残った。




地球最後の男
リチャード・マシスン:著/田中小実昌:訳/ハヤカワ文庫

 空が薄暗くなってきた。また夜がくる。ロバートはゆるんだ羽目板を直し、発電機を点検した。もうじきやつらが集まってくる。暗くなるとすぐに……。やがて夕食を作り終えたとき、やつらの声が聞こえてきた。「出てこい、ロバート!」突然蔓延した吸血病によって地球はその様相を一変した。生者も死者も吸血鬼と化した悪夢のような街で、ただひとり病を免れたロバートは、絶望的な戦いの日々を送る。だがそんなある日……
 文庫ですら出たのは1977年、さすがに新刊本じゃ簡単には手に入りませんが、名作なので読んでおきたい所。昼間は周辺の吸血鬼に杭を刺して回り、夜は吸血鬼に囲まれた家に一人篭って苦悩の日々を送る一人の男。てっきりアクション風かと思っていたら、絶望と苦悩に満ちた静かな小説でした。珍しく何の不満も無く完結。




ヴァンパイア・ジャンクション
S・P・ソムトウ:著/金子浩:訳/創元推理文庫

 天使のような声で歌うヒット曲『ヴァンパイア・ジャンクション』で、世界じゅうのティーンエイジャーを虜にした12歳の美少年ティミー。だがその実体は、みずからの歌そのままの吸血鬼。死の恩寵さえも得られず、ただひとり二千年もの夜を旅してきた。渇きを癒す血を、失われた過去を、そして安らぎを求めて……。永遠の少年が物語る血の遍歴。伝説のロック・ホラー、ついに登場!
 映画の脚本のような小説。ホラーというよりもダーク・ファンタジー。ユング派の精神分析を取り入れているんですが、それが逆に小説としての面白さを減じてしまっている感。キリスト教的な善悪ではなく、哲学的精神的な成長を目指す視点は東洋人としては分かりやすいかも。夢を現実化した幻想的なイメージや、老人と美少年との対比など、映像にすれば良くなるんじゃないかとは思います。




ザ・キープ 上
F・ポール・ウィルスン:著/広瀬順弘:訳/扶桑社ミステリー

 1941年、ルーマニアのトランシルヴァニア地方。ドイツ軍に占領された中世の城砦に、ある夜、ただならぬ絶叫が響きわたった。地下室に駆けつけた兵士たちが見たものは、首を引きちぎられた味方の無残な死体だった! さらに第二、第三の殺人が起き、恐慌をきたしたドイツ軍は、ユダヤ人の歴史学者クーザに調査を命じる。現場に残された古代文字を手がかりに殺戮者の正体を追うクーザの前にある夜、おぞましい異形の存在が姿を現わした! 吸血鬼伝説とナチスの侵略という時代背景を巧みに融合させた伝奇ホラーの金字塔
 後半が不満なので個人的にはあまり…。今作に登場した二人が続編『ナイト・ワールド』にも引き続き登場しているようなので、クトゥルーやアメリカン・ヒーロ―が好きならどうぞ。




ダレン・シャン / II / III / IV / V / VI / VII
Darren Shan:著/橋本恵:訳/小学館

 ダレン・シャン少年は、奇怪なサーカスのチケットを偶然手に入れた。そのサーカスを見にいった夜から、彼は数奇な運命を背負ってしまう。親友の命を救うために、彼が正体不明のバンパイアと取引した事とは…。
 子供向けシリーズの割りにショッキングなシーンの多い物語。大人でも充分楽しめるので割りとお勧め。




龍の黙示録
篠田真由美:著/祥伝社ノン・ノベル

 保険会社を馘になり、職を探す柚ノ木透子は、秘書の仕事を紹介された。雇主の名は龍緋比古。美術評論や翻訳を手がけ、オカルト分野では有名な著述家だという。明治期にも同名の人物がいることから、「龍は吸血鬼だ」と先輩から脅される透子。が、白皙の美貌を持つ彼に気味悪さを覚えつつも、鎌倉の古びた館に通うことになった。一方、東京では吸血鬼都市伝説が蔓延、行方不明者が続出していた。まさか彼が関係している? やがて透子の周囲に起こった変事……。果たして龍の正体は?

龍の黙示録 東日流妖異変
 美貌の著述家・龍緋比古のもとに一通の手紙が届いた。送り主は青森の寒村に住む女子高生。そこには、百年に一度行われるという「御還り祭」なる妖しき儀式と、不安が綴られていた。ある疑念を抱いた龍は一路東北へ向かった。一方、龍の不可解な行動に胸騒ぎを覚えた秘書の柚ノ木透子とメイドのライラも後を追った。だが、龍たちを待ち受けていたのは、人外の妖物と、吸血鬼「御還り様」を中心とする村の異端者抹殺の歴史だった…!

唯一の神の御名
 キリストの血をかすめ取った悪霊を追い、極東・倭の国に流れ着いた、不死の吸血鬼・龍緋比古。推古帝の治世のもと、龍は摂政である聖徳太子こと厩戸皇子と出会い、主の面影を持つ皇子に付き従うようになった。が、折りしも帝の後継を巡り朝廷内の政争が激化。皇子の息子・山背大兄は悪霊跋扈する異教・[示天(けん)]教に取り憑かれ、皇子もその渦中で病に倒れた。朝廷に忍び寄る[示天]教)の邪神・暗螺萬愉の影……。果たして倭の運命は? 二千年の時を彷徨う龍の過去を描く、急展開のシリーズ第三弾!

聖なる血
 <イエス・キリストの聖なる血を身に持つと称す、吸血鬼を抹殺せよ――>西暦二〇〇〇年の暮れ近く、カトリックの総本山ヴァティカンから日本へと送られた黒衣の使者。彼はローマ教皇の密命を受け、刺客に与えられる報酬として『究極の聖遺物』を携えていた。二千年の時を彷徨う龍緋比古に、最大の危機が迫る。宿敵ローマン・カトリック、さらに龍の血を渇望する古代エジプトの邪神がからむ三つどもえの闘いに、柚ノ木透子もまた巻き込まれていく――大人気の超伝奇シリーズいよいよ佳境!
 美形主人公に数千年の時間を余裕で飛ぶノベルズらしい荒唐無稽も、その出し方の加減はこのシリーズが一番しっくりくる。ムー系とその荒唐無稽さが駄目というのじゃなければ割りとお勧め。




流血鬼信長 1 / /
近衛龍春:著/コスモノベルス

 日本の歴史上、大々的な皆殺しをやったのは織田信長くらいでしょう。比叡山の焼き討ち、伊勢長島、越前の一向一揆の殺戮。他の戦いも含めて十万人も惨殺しているとも言われています。今川義元と一向衆との戦いは質が違うでしょうが、同じ人物がこうも変貌するのは不思議でなりません。きっと何かがあったにちがいありません。しかも、それはキリシタンと関わってからです。おそらく、西洋人が西洋の文化、戦の仕方(根切り、鉄砲の大量使用)を伝えたのではないでしょうか。
 本編には吸血鬼と流血鬼が出てきます。吸血鬼は読んで字のごとく、血を吸う鬼です。これに対して流血鬼は、大量殺人を好む者を指します。
 キリシタンたちは信長を流血鬼に変えて操作しようとする為に、西洋美女マドレーヌを側室に送り込みます。新しもの好きの信長は魔性の魅力にも惹かれてしまい、キリシタンの策略にハマってしまいます。(後書きより)
 「信長」ではありますが、基本は伴天連が持ち込んだ吸血女と増殖する吸血鬼対忍者・多羅尾光太(たらお・みつもと)との戦い。新書の特徴か、三巻まで行くと死海文書にロンギヌスの槍と少々行き過ぎの感も無きにしもあらず。表紙を見ると完結っぽいですが未完。




黒塚
夢枕獏:著/集英社

 時は十二世紀末。鎌倉に通じる藤原泰衡に追われた九郎坊は、大和坊と共に、奥州の山中をいき、粗末な荒家に一夜の宿を乞う。甲斐甲斐しく世話をしてくれるその家の女主・黒蜜に九郎坊は、魂を揺さぶられるように魅かれる。しかし主は永遠の命を生きる女だった。追っ手に襲われ、傷を追った九郎坊は、突然大和坊の剣に首を刎ねられる……そして、はるか時代は過ぎ、日本では想像を絶する過酷な闘いが……。安達が原の鬼女が美貌の武者を甦らせる。一千年の時空を超えた、愛憎と戦いの壮大な伝奇ロマン。
 歴史モノっぽいですが、舞台のメインは半獣人などが闊歩する大災厄後の未来世界。吸血鬼モノで血についても出てくる割に、あまり吸血鬼を気にさせません。雑誌『スーパージャンプ』で野口賢作画のマンガも連載。




吸血鬼エフェメラ
大原まり子:著/ハヤカワ文庫

 地球には古えから、人類とは別種の知的生命体が存在してきた。彼らは吸血鬼と呼ばれ、その歴史は迫害の歴史であった。一族は吸血鬼狩りの激しい東ヨーロッパを逃れ、やがて東の果ての国の教会の奥深くでひそやかに生きつづける。だが、22世紀初頭、巨大財閥グループ・大門ヤスヒロが突然、吸血鬼一掃を目指し、一大殺戮を開始した。一族の存亡を賭け、吸血鬼たちがとった最終手段とは……幻惑の未来世界の吸血鬼物語。
 ハヤカワ文庫の典型。近未来・SF・独裁者・寄生生物・新人類なんて言葉に惹かれたらどうぞ。私はあまり…。




パリ吸血鬼
クロード・クロッツ:著/ハヤカワ文庫

 今の時代、吸血鬼が生きていくのは楽じゃない。人間の血が半分混じったドラキュラの息子フェルディナン。高速道路の工事で住まいを追われた彼が、パリの街に出てきたのはいいけれど、血がなかなか吸えずに四苦八苦。夜の街をさまよっては珍騒動を巻き起こし、果ては血を盗みに行った血液銀行で、反対に血を抜き取られるありさま。そんな折り、あろうことは彼は一人の娘と恋に落ちてしまった。しかも、自分の体には、思わぬ変化が起き始めて……。コミカルな長篇「パリ吸血鬼」のほか、奇妙な味の短篇8篇を収録。鬼才クロッツの才気溢れる傑作集
 パロディは見受けられますが、「コミカル」とか「珍騒動」とか書かれるようなユーモラスな印象は持たなかった。どちらかというと時代に適応できなかった者たちの切なさ。他八編の短篇はオカルト&ホラー風味の古きよきユニークな作品。




血の季節
小泉喜美子:著/早川書房

 標準、もしくはそれ以上の知能を持ち、至って普通に見える男が起こした幼女殺人事件。犯人とされた彼が精神科医に語る彼の人生と、事件を追う刑事の捜査が交互に語られる。
 ドラキュラをモチーフにした作品。他文春文庫にも。




吸血鬼小説 赤すぎる糸
仙波龍英:著/マガジンハウス

 リインカネーション。愛と恐怖の物語。吸血鬼の最後の儀式が、いま東京に始まる。鬼才、仙波龍英の書き下し傑作長編モダン・ホラー。
 1990年東京。冗談のような季節を記録したこの年、田園調布の一角で吸血鬼はある決意を胸に秘めていた。転生を繰り返してきた「彼」と「彼女」、そして吸血鬼の何百年にも渡る関係に関わる重大な決意を。
 過剰な表現と、愛すべきとは言いがたい登場人物に好みは分かれそうです。その辺りのグロテスクな、胸の詰まりそうな感覚を楽しむ小説。




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