ポルフィリン症 (Porphyria)
 体内の酵素の異常により体内にポルフィリンが過剰に蓄積されることで引き起こされる症状。光過敏症や精神錯乱を引き起こし、顔色が青白くなったり、犬歯が発達することもあることから、誤って吸血鬼病などと呼ばれた。
 血液中で酸素を運ぶヘモグロビンはヘム蛋白とグロビン蛋白が結合してできるものだが、そのヘム蛋白を合成する過程で、中間代謝物であるポルフィリンの代謝に関与する8種の酵素のどれかが欠損することにより、ポルフィリン体、及びポルフィリン前駆体が代謝されずに体内に蓄積してしまうことで生じる症状。このとき、光力学的作用を持つポルフィリンが蓄積すると光線過敏が起こり(皮膚型ポルフィリン症)、ポルフィリン前駆体が蓄積すると腹部症状を中心とした神経障害(急性ポルフィリン症)が起こる。
 欠損している酵素により過剰に作られる化合物は異なるが、過剰な毒素によって中毒を起こし、中枢神経系に影響を与える。主に露出部に紅斑・水泡・浮腫などが起こる光過敏症、皮膚過敏症、化学物質・重金属過敏症、四肢の痛みや脱力、腹痛や嘔吐、高血圧や頻脈を伴う。発作は自律神経に始まり、末梢神経、脳神経に至り、脳へと移る。それにより痛みと共に麻痺や精神錯乱を引き起こす。スコットランド女王メアリー(1542〜87)からイギリス国王ジョージ三世(1738〜1820)、プロシア国王フレデリック(1712〜86)などに遺伝していたため、王の病とも呼ばれる。
 
 その名は赤紫の長石や水晶の結晶を含むポルフィリー斑岩に因んだギリシア語の「紫」に由来し、ポルフィリン症の特徴でもある赤紫の色素を持つポルフィリンが体内に残留するために生じるポートワイン(赤紫)色の尿の色からとられている。なお、光を当てておくと暗紅色に変わり、紫外線を当てると蛍光を発する。

 ポルフィリン症の種類は以下の通り。上の4種が皮膚型、下の4種が急性のポルフィリン症とされる。
  • 先天性赤芽球性ポルフィリン症
  • 骨髄性プロトポルフィリン症
  • 晩発性皮膚ポルフィリン症
  • 肝骨髄性ポルフィリン症
  • 急性間歇性ポルフィリン症
  • ALAD欠損性ポルフィリン症
  • 遺伝性コプロポルフィリン症
  • 多様性ポルフィリン症
 遺伝性の病気だが、湾岸戦争や、ベトナム戦争におけるオレンジ剤(枯葉剤)によってポルフィリン中毒症(IP)、晩発性皮膚ポルフィリン症(PCT)の発症とその子孫への遺伝が認められている。
 また、ブリティッシュ・コロンビア大学のデイヴィッド・ドーフィン博士は、1985年に吸血鬼伝承とそれに伴う集団ヒステリーの原因は、中世におけるポルフィリン症患者かもしれないと発表している。


(1) ポルフィリンそのものは天然に存在しないが、鉄を中心原子とするヘムや、マグネシウムと結合したクロロフィルなどの分子内錯体として天然に存在し、生体内の化学反応によってつくられる生理的に重要な物質。
(2) 光過敏症により紅斑・水泡を繰り返すと皮膚には色素が沈着し、多毛化したり、皮膚が厚くなる。