使徒 (Apostle)


 イエスによって任命された十二人の弟子。イエスが山で祈りを捧げた後、弟子のうちでこれと思われる者が呼び寄せられ、更にそこから十二人が選ばれて任命された。十二という数はイスラエルの十二部族に由来し、人の子が栄光の座につくとき十二部族を治めるようになる(マタ19:28)と言われる。

 使徒はイエスの側に置かれると共に、派遣されて宣教を行い、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気や患いをいやす権能を与えられた。
 宣教に派遣された使徒は、金も杖や袋も、履物や予備の下着も持たず、イスラエル人を悔い改めさせるために『天の国は近づいた』と宣べ伝え、働いた報酬として滞在する家で出される食事を受ける他は無償で働くことを命じられた。また、異邦人やサマリア人ではなくイスラエル人の中で彼らを受け入れる者の所に留まり、もし受け入れられなければ、足の埃を払ってその家や町を出るようにと言われていた。(マルコ福音書では、一本の杖と履物を持つことを命じられ、二人ずつ派遣されたことになっている。ルカ福音書では、他に七十二人の弟子が同じような条件で二人ずつ派遣されている。)(マタ10:1、マコ6:7、ルカ9:1)
 イエスの死後は、復活したイエスによってイスラエル人だけではなく全ての人々に福音を宣べ伝え、洗礼を授けることを命じられた。
 福音書により名前や記事の異同はあるが、一般に十二使徒とされるのは以下の通り。
  1. シモン・ペトロ
  2. ペトロの兄弟アンデレ
  3. ゼベダイの子ヤコブ(大ヤコブ)
  4. ヤコブの兄弟ヨハネ
  5. フィリポ
  6. バルトロマイ(ナタナエル)
  7. トマス
  8. 徴税人マタイ(アルファイの子レビ)
  9. アルファイの子ヤコブ(小ヤコブ)
  10. タダイ(ヤコブの子ユダ)
  11. 熱心党のシモン
  12. イエスを裏切ったイスカリオテのユダ
 それにイエスの死後、イスカリオテのユダの抜けた穴を埋めたマティアを含む十三人の他に、パウロとバルナバ(使徒14:14)、アンドロニコとユニアス(ロマ16:7)も使徒の名で呼ばれる。但し、彼ら初代使徒の死後は使徒の称号にはイエスの目撃性が重んじられたことで、使徒の名が控えられ、長老や監督、司教や主教が使徒の後継者とされる。
 教会の中においては第一の存在、教会の土台であり、重要な事項の決定には関わる最高機関。


(1) ギリシア語の使者Apostlosに由来する。
(2) 12人という数の根拠は、三位一体の信仰を四大州に広めるためとも(『黄金伝説』)。
(3) イエス教団の中心的な人物だったのではないかと思われるが、名前が数箇所に見られるだけの者がいるなど彼らに対する記述は極端に少なく、存在自体が疑問視されることもある。
(4) パウロについては、恐らくイエスとの面識は無い。また、福音書以降で使徒とされた数名についてもイエスと面識があったかどうかは疑問である。