† 聖遺物
Relics


 イエスや使徒、聖人にまつわる品のこと。遺体やその一部、生前に使用したり触れた品や、墓に関わる物を含む。
 聖遺物崇拝は迫害時代の殉教者崇敬と平行して行われ始めた。四世紀にヘレナ太后によってキリストにまつわる聖遺物が発見されると崇拝への関心は高まり、中世の西欧で最も盛んになる。同時に売買取引や盗みの対象ともなり、最盛期には偽物や略奪が横行し、逆に遺物の正当性を示すために略奪の履歴を記している物も多いと云う。カロリング朝期(8〜9C)には全ての教会が守護聖人の聖遺物を保持し、祭壇近くに安置することが定められた。

 イエスが磔にされた「聖十字架」や「聖釘」、『ヨハネによる福音書』にあるイエスのわき腹を突いた「聖槍」、イエスの遺体を包み、その姿が写し取られたと云われる「聖骸布」をはじめ、三大巡礼地であるスペインのサンティアゴ・デ・コンポステラ大聖堂には使徒大ヤコブの聖遺物が、ローマのサン・ピエトロ大聖堂には使徒ペトロの聖遺物があり、多くの巡礼者が集まる。
 また、聖堂建築においては信徒を殉教者の遺骨の側に葬るように考案されたり、巡礼者に近づきやすくするために地下の納骨堂(クリュプタ)に置いて、その上に祭壇を置く形式などが確立。聖遺物容器も贅美な材料と精巧な技法を使った物が作られる。ゴシック期には内部の遺物が見られるように部分的に水晶を用いた聖堂型の容器も多い。
 東方正教会では「不朽体」と呼んで崇敬の対象とするが、プロテスタントでは聖遺物を認めない。

聖遺物所在備考
聖骸布トリノイエスを埋葬した時にその遺体を包んだとされる亜麻布。写真のネガのような全身像の他、手首や足、頭部、脇腹など全身に血痕が残る。
聖衣アルジェンテールイエスが着ていたとされる毛糸の衣服。アルジェンテールにある他、トリーアにも一部がある。
スダリオンオヴィエド聖骸布と共にイエスの頭を覆ったとされる布。血液が付着している。スペインのオヴィエドにある。
ローマ十字架の上に付けられた「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いた札。ギリシア・ラテン・ヘブライの三ヶ国語で書かれていたとされる。
聖釘ローマイエスを十字架に打ち付けた釘。ローマの聖十字架教会、ミラノ大聖堂、モンザにある神聖ローマ帝国の冠、ウィーンの聖槍の中にもある。
ミラノ
モンザ
ウィーン
聖十字架
イエスを磔にしたとされる十字架。聖十字架教会の他、細分化されて世界中にあるが、全て集めるとビル一杯にもなるという。
聖槍ローマイエスの脇腹を刺した槍。
ウィーン

  •  イエスが生まれた厩の飼葉桶やマリアの乳の滴、イエスがかぶった茨の冠の刺、高僧の死後に遺体を煮て取り出した骨までが存在していたと云う。アーサー王伝説に登場する、イエスが最後の晩餐に使い、アリマタヤのヨセフが流れ出るイエスの血を受けたとされる「聖杯」、十字架に向かうイエスの顔を拭い、その顔が写し取られたという「ヴェロニカの布」なども有名。
  •  787年のニカイア第二公会議で聖遺物を祭壇におくよう規定され、801年、813年のカルタゴでの教会会議では聖遺物を持たない祭壇の破壊が規定されたようだ。
  •  腐敗しない死体は聖人の証明でもあるが、神にの受け容れられない呪われた者の証明でもある。